「手仕事の店」ってなんだろう…①

元々トップページにあった風景写真。岡山県真庭市にある旧勝山藩主三浦亭の春。岡山の風土は清玩堂の商売と密接なかかわりがあります。

 「手仕事の店」として開店した清玩堂も、おかげさまでオープンより1年半を過ぎました。

 あっという間だったこの来し方と行く末――「手仕事」というものはどういうものなんだろう。

 今や死語でしょうか…「脱サラ」。独立、起業、言葉は何でも良いと思います。

 「営業のやつ」だった丁稚がのれん分けをしてもらって、開いた店でまたへこたれる――

 実のところとても古くからある小商人の生業をすこしお話ししようと思います。

 

品物と向き合うことはとても難しい。

開店の準備って大変だなぁ、と思っていたら、あっという間に1年半が過ぎていました。

ご愛顧いただいている皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。

私、清玩堂店主は元々サラリーマンとして長く物売りの仕事に携わってまいりました。

これまでに売ってきたのはお線香やお香、キャンドル、アイディア雑貨、医薬品、化粧品、衣料品、衛生用品、靴、家具…

手に取ることができる品物はたいてい扱ってきたかもしれません。

販路は常にBtoBで、100円ショップから百貨店、様々な業務資材としてなど、あらゆる販路を引き継ぎ、開拓する「営業のやつ」でした。

そんな脱サラ店主が今しみじみと感じていることは改めて、品物と向き合うことはとても難しいということです。

誰しも品物と接した瞬間の

・好きか、嫌いか

の直感があると思います。そして私のような小商人はすぐに 

・売れるのか、売れないのか

の判断をしようとします。無意識のうちにこれまでに扱ってきた商品、売れた商品、売れなかった商品との比較をしていたのだと思います。

売り込みを受ける立場の時にはその判断を率直に口にしたりします。

「営業のやつ」として長く付き合いのある同業者たちと、新しく出てきた商品についてお互いの意見を交わす――というと聞こえはいいですが、けなしたりほめたり、「あの時のあれに似ている」「売れるかも」「売れないよ」などと話すのはとても楽しいひとときでもありました。

BtoBの商売で「売れる」という言葉には2つの意味があります。平たくいうとお店を預かるバイヤーに「売れる」かという第一関門と、実際に並んだお店で「売れる」のかという最終判断です。

「営業のやつ」の成績(売れる)は主にこの第一関門の突破率にかかっている、というと一気に身近に感じていただけるかもしれません。

この第一関門を突破する技術に関しては様々なハウツー本が世にあり、どんな細道にもプロ中のプロがいます。

私もこの島国の毛細血管程度に細い流通では大きな顔をしていたのだと思います。

そんな「営業のやつ」が独立したところで視界は何も変わらない、けれど少しずつ変わっていく。

何回かに分けて、「手仕事」の店を始めて考えた流通の在り様、「手仕事」ってなんだろうということについて書いてみたいと思います。

2022年9月吉日

店主拝