親骨が太く、その昔は閉じたまま帯にはさんで持ち歩くのに便利とされていた「江戸扇子」。
落語家さんが手ぬぐいと共に数少ない小道具として使うのを見るほか、普段持ち歩いている方を見かけることはあまりないかもしれません。
店主の私も伊場仙様とご縁が生まれるまではそうでした。
実際使ってみて、皆様が特に気になさる「耐久性」がどの程度の物か、一年持ち歩いた結果をお伝えします。
こちらが店主が普段持ち歩いているビジネスバッグ。この前面に二つある外ポケットに江戸扇子「波・青」を放り込み持ち歩くことたっぷり一年。
さてさて、扇子はどうなったでしょうか。
放り込まれたのは外ポケットの出入りの激しい片方。手帳、名刺入れ、財布などと同居するかなりハードなタコ部屋です。
ちなみにもう片方は折りたたみ傘と手ぬぐい、買い置きの煙草などが入るのどかなサロン風。扇子には気の毒でしたが耐久テストにはもってこいの環境でした。
結果です。
夏の外出先で「汗が引くまでの間に5、6分あおぐ」を繰り返したほか、秋冬はただひたすら鞄の底で衝撃と摩擦に耐えるという使用状況でしたが、撮影の為によくよく見てみても、先端が少しはげたかな、というくらいでした。
実は、昨年の秋口に「もう使わないから鞄から出してしまっておこうかな」と考えたのですが、すっかり忘れておりました。
冬に「しまった、もう壊れてしまったか」と思って取り出したところ、どうともなっていないことに安堵したのと同時に、なかなか丈夫なものなのだと感心したという次第です。
以前に伊場仙の大内様にインタビューをさせて頂いた際、「扇子の正しい持ち方」を教わりましたが、店主もそれを守って、骨に負担を掛けないあおぎ方を心がけておりました。
(伊場仙・大内様のインタビューはこちら第1回 老舗の『中の人』に聞く ~伊場仙様より~ | 手仕事の店 清玩堂 (seigandou-popos.com))
大内様に教わったのは「あおぎ方」ですが、扇子を長持ちさせるにはこの他に
・無駄に開け閉めをしない
可動部分が壊れやすいという道具の原則からしてまずこれかなと思います。扇面の和紙に張りがなくなるということも使い勝手の面では大きく変わる部分かと思います。ずっと手に持っているとパチンパチンと手遊びしたくなりますので、さっさと鞄に放り込むということ。
・子供に遊ばせない
彼ら(かつての店主)は平気で「逆向きに開いたらどうなるのかな」という疑問を実行に移してくれます。触らせないのが一番です。
といったところでしょうか。
とはいえ、扇子は大内様の言う通り扇子は耐久性を旨とするアウトドア用品などと異なる雅な「生活雑貨」ですから、程良く使い込んでは新しいものに替えて気分も新たに――というのが一番良い付き合い方だろうと思います。
耐久性試験…いや、「鞄の中に雑に一年放り込んでおいてもなんともなかった」
というお話しでした。
2023年4月7日
店主拝